自動車のGPS、レーダー、カメラなどのセンサーで自動的にクルマを走らせるシステムのことを「自動運転システム」と言います。
目的地を入力するだけでそこまで走ってくれたり、人工知能(AI)の判断で走行速度や車間距離を適切にコントロールしてくれたりします。
自動運転システム関連のマーケット規模は770兆円にのぼり、様々なメーカーが走行実験や開発を進めています。
また、自動運転システムが普及すれば自動車事故の発生率もダウンするでしょう。
そして、それに伴い自動車任意保険の在り方も変わってくる・・・そして自動車保険料も安くなるかもしれません。
自動運転システム搭載車が交通事故を発生させた際の責任は?
自動運転システムが組み込まれた自動車が事故を発生させたときは誰が責任を負うべきなのでしょうか。
以前は「メーカーが責任を負うべき」とする論調もありましたが、最近公開された「自動運転に掛かる制度整備大綱案」において「基本的に自動車の持ち主が責任を負う」ということになりました。
所有者を誰かに貸して、その人が交通事故を発生させた際は「運行供用者」が責任を取るのが原則となっていますが、それと発想は一緒です。ちなみに、対人補償に関しては自賠責保険にて補われます。
ただ、この先自動運転システムが発展していけば、事故が起きた際の責任の所在に関する考え方も変化するかもしれません。
自動運転システムのレベル
自動運転システムには次の5つのレベルがあります。
レベル 主体者 内容
レベル1:運転サポート 運転手 「左右」「前後」のどちらかのオート制御をする
レベル2:部分運転オート化 運転手 「左右」「前後」両方のオート制御をする
レベル3:条件付き運転オート化 緊急時は運転手・通常は自動システム 運転手が監視した上でオート運転システムが限定範囲内で運転をする
レベル4:高度運転オート化 自動システム 運転手の監視なしでオート運転システムが限定範囲内で運転をする
レベル5:完全運転オート化 自動システム オート運転システムが全範囲で運転をする
今のところ実用化されているのはレベル3まで。主に「オート駐車機能」「衝突防止オートブレーキ」「プロパイロット(同一者走行)」等が普及しています。
「オート車線変更機能」付きの自動車が平成30年には日本でも購入できるようになります。
また、自動運転システムの発展により、任意保険の補償に関しても変わってくるはずです。
例えば「あいおいニッセイ同和損保」と「三井住友海上」は、すでに0円で「オート運転システムへのクラッキングが引き金の交通事故を補償する特約」を付けています。
オート運転システムの進化に伴い、これからもこのような特約が増えていくことでしょう。
自動運転システムの発展により社会はどう変わっていくか
自動運転システムが普及すれば、運転中に他の作業をすることも可能になりますし、運転による体力の消耗も減っていくことでしょう。
しかし、何よりも大きいのは安全性が向上することです。ヒトが自動車を運転する場合はどうしても何らかのミスが起きる可能性が否定できませんが、自動運転システムが進化していけばその手のミスが激減し、事故件数が大きく下がることでしょう。
そして、この先自動運転自動車の有効性が認められれば、その車種の自動車保険料がダウンしていくかもしれません。
ただし、今のところこれといった判例が存在するわけでもありません。
また「事故が起きた場合の『メーカー』『運転手』『所有者』の過失割合」も決まっていません。
となると、自動運転自動車の交通事故に精通した「弁護士費用特約」の重要性が上がっていくかもしれません。
また、この先どれだけ自動運転システムが発展したとしても絶対にミスが起こらなくなるとは言い切れません。
例えば、近年では将棋の人工知能ソフトがかなりの発展を遂げていますが、それでも人間ではありえないようなミスをすることもありますし、エラーが起きて手が止まってしまう場合もあります。
自動運転システムについても全く同じことが言えるでしょう。
ですから、実際には「自動運転システムを、常に運転手が制御する」というのが、落としどころになるのではないかと思います。「運転免許証がないと自動車に乗れない」という状況は今後も変えるべきではないでしょう。
それから、自動運転システムが発展すると、飲酒運転をする人が多くなるのではないかという予想もあります。ですから、自動車教習所での教育やアルコール検知に関しても整備していかなければなりません。
何にせよ、自動運転システム関連で、これまでなかったタイプの補償が増えていくと思われますので、自動車保険を更新する際には補償内容をしっかり見直すようにしましょう。